【ブランコ】
ギコギコと音を立てて君がブランコが揺らす。幼い頃はいつも、競い合うようにブランコを漕いでいたっけ。大人になってからはもう、随分と長いこと乗っていなかったけれど。
「それ、大人の体重支えられるの?」
「さあ? でも壊れてないし大丈夫なんじゃない?」
僕と問いかけに君はあっけらかんと応じる。それでも僕は君の隣のブランコに腰掛けられない。ポールに背を預けて、大人ぶった顔で君のことを見守るだけだ。
取り繕うことばかりを覚えてしまった僕は、もう無邪気に君の隣にはいられない。夢を追ってこの町を飛び出していく君の背中を追いかけていけるほど、無鉄砲な子供ではいられなくなってしまった。
「じゃあ、気をつけてね」
「うん、行ってきます!」
軽やかに笑って、君はブランコから飛び降りた。キラキラと輝く君へと重たい手を振る。無人になったブランコが、君の名残を残してあてもなく揺れていた。
2/1/2024, 9:49:03 PM