エムジリ

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「どうして雨がふるの?」
 それはねえ、うーん、お空が泣いているからかもね。
「かなしいの? いたいの?」
 そうだなあ、どっちかなあ。いたいのかなあ?
「お空さん、いたいのいたいの飛んでいけー」

 握った手のひらはいつも湿っている。
 大人よりずっと高い体温、早い呼吸、丸まった背中の小さいこと。
 抱きしめれば両腕の中にすっぽりと収まってしまうのに、しがみつく力は驚くほど強い。
 笑い声は甲高く、小さな口をいっぱいに開いて、小さく丸めたおにぎりを一生懸命にほお張る。桃色の頬っぺたは、ぷくぷくと柔らかい。
 まだ器用に動かせない指先で玩具をいじり、壊し、怒り、泣いて、叱られ、どうにか納得し、次は壊さぬようにいじり、少しずつ大きくなっていく。

 子どもの純粋さは見ていて悲しくなるほど。悲しいほど非力で、脆くて、時に残酷で、実は賢くて、一途だ。
 後ろをヨチヨチついてまわって、キャアキャアはしゃいでかわいいね、とってもかわいい。
 真っ白い純真な心に、どうか無償の愛を。

「また雨ふってるよ。また泣いてるの?」
 そうだねえ、また、お空が泣いているんだねえ。
「そっかあ。じゃあぼくが良い子良い子してあげる」

 涙が出そうになる。


▼空が泣く

9/17/2023, 1:54:37 AM