ストック1

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「もしも君が味方だったら、友になれたかもしれないな」

戦いのさなか、彼は少し悲しそうに言った
俺と彼は非常に似た思考をしており、俺自身も、仲間であったならば、気の合う友として背中を預け、信頼しながら戦えただろうと思う
いや、戦い以外でも、きっといい友人関係を築けたに違いない
だが、俺と彼は相容れぬ敵同士
友になれるはずはなく、お互い相手を殺さなければならない
そんな間柄だ
俺が先に死ぬか、彼が先に死ぬか
どうなるかはわからないが、それで関係性は完全に終わる
互いにそれだけの存在
そのはずだった

世の中というもの、常に何かが変化し続ける
環境も、状況も、人の心さえも
俺が仕えていた主は、勝利するために禁断の力に手を出した
決して手に入れてはいけない、おぞましき力
戦いを続けるうち、狂ってしまったのだろう
その瞳は、もはや正気ではなかった
彼はもともと、大きな野望を持ち、目的のためなら手段を選ばないところがあった
だが、ついに越えてはいけない一線を越えたのだ
その力は、敵も味方も関係なく、無惨に喰らい尽くしてしまう、世界を揺るがす力
俺は他の仲間とともに、主を止める決意をし、追手からの追撃を掻い潜り、命からがら敵の、俺と友になれたかもしれない彼のもとへたどり着いた
彼なら俺たちの言うことを信じ、話を通してくれると思ったのだ


俺たちはしばらく拘束された後、証言の裏が取れたらしく、相手方の主に詳しい状況を伝えることとなった
敵である俺たちは、用済みになったら処刑されるのではとの懸念もあったが、どうやら味方として引き入れてくれるようだ
ひとまずホッとしたが、大切なのはこれからだ
仕えていた元主の野望を、なんとしてでも阻止しなければならない
緊張がにじむ中、彼が言った

「大変なことになったが、僕としては少し、嬉しく思っているんだ
不謹慎だけどね」

言いたいことはわかる
俺も実は緊張とともに、内心ワクワクしている自分を感じていた
敵でなければ友となれたであろう相手
その相手と仲間になることができた
彼の強さは嫌というほど理解している
そんな人間が今は味方だ
これほど心強いことはない
おそらく、向こうも同じ思いだろう
そして何より、俺はようやく彼と友人になることができたのだ
二人で協力すれば、どれほど強大な相手であろうと、負ける気がしない
さあ、行こう
この戦いを、おそらく最初で最後の共闘を、勝利で終わらせるために

6/14/2025, 11:24:28 AM