『時を告げる』
わたくしの名はメア・リースー。
高貴なる者たちが集う私立ヘンテコリン学園
に通う、高校一年生ですわ。
「もう、セバスチャンったら。わたくしを置い
て先に行ってしまうなんて、あんまりですわ」
毎朝起こしてくれる執事のセバスチャンは、
美化委員会の会議のため、早々に学園へ
向かってしまったのです。
クロワッサンを食べながら登校する途中、
メアは奇妙な怪人と出くわしました。
怪人は目からビームを放ち、
その光を浴びた人々は急にやる気を失い、
地べたに座り込んだではありませんか。
「はあ、おもんな」
「仕事なんかやってらんねーぜ」
「えっ……どういうことですの?」
「怪人ダルダルーイ。人々のだるい感情から
生まれた怪物だにゃ」
突然、紫色の猫が宙にふわりと浮かび、
メアに話しかけてきました。
「怪人ダルダルーイ?」
「だにゃ。このままだと、みんながだるだる
モードに突入して、まずいことになるにゃ」
状況を飲み込めないメア。
「そこのあにゃた!今こそチェシャと契約して、
魔法少女になるにゃ!」
✨️✨️🎀👸🎀✨️✨️
怪人が再びビームを放とうとした瞬間、
フリフリの衣装をまとった娘が現れ、
怪人の前に立ちはだかります。
「何だ貴様は!?」
「闇夜に咲く悪の華、キュアヴィラネス。
マンマに代わってお仕置きいたしますわ!」
キュアヴィラネスは、ピンヒールで怪物を蹴り
飛ばし、激しい戦闘が繰り広げられました。
戦いの最中、彼女の胸のリボンについた
ブローチの宝石が点滅し始めます。
「まずいにゃ。この姿は3分間しか持たない
にゃ。もうすぐ変身が解けるにゃ」
「何ですって?!そんな大事なことは
先に言ってくださいまし!」
油断したメアに、怪人の魔の手が迫り来よう
としたその時────
黒いマントを羽織り、仮面をつけた白銀の狼
が疾風のごとく現れ、唸り声を上げながら
怪人に食らいつきました。
「いててててて!」
「キュアヴィラネス!今のうちにトドメを!」
「はっ、わかりましたわ!悪役令嬢サンダー!」
黒い稲妻が怪人の頭上に落ち、
怪人は灰と化しました。
「助けてくださってありがとうございます」
「礼には及ばない」
クールに言葉を返す狼。だがしかし、彼の
しっぽは喜びでフリフリと揺れています。
「よろしければ、お名前をお伺いしても?」
「私は、バトラー仮面だ」
「バトラー仮面?……えっと、
セバスチャンですわよね?」
「違う。バトラー仮面だ」
狼はくるりとマントを翻し、
彼女に背を向けました。
「もう行かなくては。さらばだ」
「あっ……!」
狼はそう言うと、建物の間を軽やかに
飛びながら姿を消しました。
「よくやったにゃ、キュアヴィラネス。この調子
でわるものたちをやっつけていくにゃ」
丁度のタイミングで、時計塔の鐘がゴーン、
ゴーンと時を告げるように鳴り響きました。
「なんてこと!優等生であるこのわたくしが、
遅刻などあってはならない事態ですわ!」
そしてメアは慌てた様子で校門へと
駆けていきました。
9/6/2024, 10:00:11 PM