ストック1

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「……なので、それを続けていれば、あなたを評価してくれる方に巡り逢います」

「ありがとうございます!
頑張ってみます!」

私は占い師だ
超インチキ占い師だ
自分で知識もなく考えた、独自の適当な儀式をして、客の話を聞いた後、色々それっぽいことを言い、「あなたの運命を変える方と巡り逢いますよ」と言うだけの簡単なお仕事
だいたい自信満々に断言すれば、みんな晴れやかな笑顔で信じてくれる
……意味がわからない
私の怪しさ満点の占いのどこに信じる要素があるのだろう
とてつもなく嫌なことがあって、もう人生棒に振ってやれ、とやけくそで始めただけなのに、やたら評判がいい
リピーターも多いのだ
私みたいな適当なことしてる人間が、うまくいく世の中なんて間違ってるでしょ
いや、自分でやっといてなんだけど
この仕事始めてから、私生活もなんか、いい方向に向かってるし
なんか、都合よく行き過ぎて怖い
ちょっと占い師にでも相談しようかな

「占い師が占ってもらうってどうなのよ」

それはそう
目の前にいるのは、ベテラン感満載で、雰囲気出まくりの評判のいい大先輩占い師

「私、インチキなので
占ってもらっても問題ないかと」

「声を大にして言えないけど、あたしだってインチキよ
ま、でも話はわかったわ
あんたがうまくいってる理由、教えてあげるわよ」

大先輩の視点に期待しよう
占いはインチキらしいけど

「インチキ占い師に必要な能力、わかる?」

「図太さ?」

「ハッハッハッ、違いない
でもね、一番大事なのは、相手の話を引き出し、長所と短所、人となりを理解することね
それができるやつはインチキ占いでうまくいくのよ
長所を伸ばし、短所の改善や補うためのアドバイスができるからね
で、あんたお得意の巡り逢いますよ、だけどね、そう言われると人は他人に興味持って、積極的に関わろうとするのね
結果、自分で勝手に味方を見つけて、占いのおかげだと思うわけ」

なるほど
でも、私は特にそんなにうまいこと占いができてるとは思えないけど
相手の心理を利用する勉強もしてないし

「そうそれ
ハッキリ言って、あんたは無自覚にやっちゃってる天才肌なのよ
たぶん、あんたは他人への興味が強くて、話もちゃんと聞く
さらに人を見る目がある
その上で相手の身になって的確なアドバイスをしちゃうってわけ
うまくいかないわけがないわよ」

「私にそんな才能が……」

努力したこっちからしたら羨ましいわよ、と大先輩は締めくくった
怖がる必要はなかったか
実は天職なのかも
この人にたまたま巡り逢えてよかった
ラーメン屋のカウンターで沈んだ私に声をかけてくれて、占い師をやる場を用意してくれたのはこの人だったから

「ま、そんな感じだから、自信持って続けたらいいのよ
私生活がうまくいってるのも、あんたが仕事を頑張って、軌道に乗って、心が楽になってるからなんじゃない?
まあともかく、なんかあったらまたあたしに相談しなさい
お金はもらうけどね」

「はい、ありがとうございます!」

「たまにはあたしの悩みも聞いてくれると助かるわ
聞くだけでもいいから
もちろん、お金は払うわよ」

「わかりました!」

せっかくいい感じにできてるから、これからもインチキ占い師、続けよう
……天職に出会えた、これも巡り逢いかな?

4/24/2025, 11:15:23 AM