※番外編(前回の番外編とはまた違います)
この思いはなんなのだろう。考えれば考えるほど分からなくなる。アイツは生意気で、ずる賢くて、バカで、アホで、超がつくほどのお人好しで。ただの同期、良きライバル、仲間。言い換えるならばこれらぐらいだろうか。最近、私はそんなアイツを目で追ってばかりいる。どうかしている。倒さねばならぬ敵は、目の前にいるというのに。
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嗚呼、そうか、そうだった。思い出した。私のこの思いは、何一つ間違っていなかった。彼は私の想い人だったのだ。どうして忘れていたのだろう。どうして思い出せなかったのだろう。どうして、今になって思い出すのだろう。
ぽたり、ぽたり。目の前にある顔からは大きな雫が流れてきて、私の頬に当たる。嗚呼、どうして泣くの。泣かないで、私の愛しい人。なんとかそう伝えようと喉を震わす。けれど口から出るのはか細い呼吸の音だけ。これじゃあ何にも伝わらないじゃないか。神様を恨むよ。でも、そんな神だからこそ私は願いたい。私の望みは叶えてくれなかった、ならば彼への願いは?きっと叶えてくれる。だって彼は、雷様に愛されている人だから。
どうか、どうか。願わくば、この人が。
沢山の苦労を重ねて来たこの人が。
いつか好きな人と結ばれて、報われますように。
きっとそれは私ではない誰かなのだろうけれど。
嗚呼、でもきっと優しい彼のこと。
きっと責任を感じてしまうと思うの。
だからね、神様。これだけは叶えて。
彼が辛い思いをしないように。
彼から私に関する記憶を。
全て消してください。
大丈夫。だって彼には多くの仲間がいる。
たかが私一人がいなくなったからって
世界は止まらない。回り続ける。
拝啓、好きな人へ。幸せになってくださいね。
『それは果たして愛なのか恋なのか。
はたまた彼女のエゴか』
6/4/2025, 4:30:33 PM