クロノネコスキー

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2月。

ご飯が食べられなくなっていて
寝てばかりいた飼い猫が逝った。

苦しさから解放されて良かったと思った。


5月。

突然、一人では動けない体になり
最終的に機械に生かされているだけ
の状態になっていた父が逝った。

それこそ何重苦かも分からない状態から解放されて
良かったねって思った。



猫は荼毘に付し納骨堂に入れ、

父の葬儀も兄と二人でなんとかやりきった。

そんな中。

妻が自分の携帯に届いた長女からのメールを見せてくれた。


『パパがしんぱい。』


柔らかい雨は唐突に僕の上に降り注いだ。

慌てて後ろを向きしばらく前を向けなかった。

強がっていたわけじゃない。
自分でもそう思っていた。
でも、不意に自分に向けられた言葉に、
心が大きく動揺してしまったのは事実で、
不覚にも後ろを向いてやり過ごすことしか出来なかった。

優しく甘やかで柔らかい雨に心が溶かされた。

そんな感じだった。

『連絡してあげてね。』

妻から促されて娘へメールを送る。

「俺は大丈夫。」ただそれだけが伝えたかった。








11/6/2023, 9:53:05 PM