【ただ君だけ】
君と過ごすようになったのは、中学校からだった。
小学生の頃から好きだった君と3年間、一緒に学校生活を送って、より好きになった。
高校に進学してからは、一緒の時間が増えた。
それ故なのか、君との時間を大事にできなかった。
毎日、君と過ごす時間があったのに、
勿体無いことをしていたなと、今では思う。
大学に進んでからは、君との時間は
かなり減ってしまった。
それでも君との時間は、相変わらず楽しかった。
社会に出てから、君とのは無くなってしまった。
君を好きな気持ちは変わらないのに、仕事に忙殺されて、君との時間を作る余裕が無くなった。
朝晩問わず必死に働いて、シフトが休みの日には勉強会に参加する。
命令されれば、片道2時間の道のりを運転してヘルプに入る。
そんな働き方をしているうちに、
心身が壊れてしまった。
仕事から離れてさえしまえば、体はすぐ回復した。
多少、体力は落ちていたのかもしれないし、免疫力も低下していたかもしれない。
けれど、そんなことは些細な問題だった。
心の回復には、どうやら時間がかかるらしい。
薬を服用していても、夜は不安で寝付けなかった。友人から気分転換にと遊びに誘われても、結局外に出られなかった。
こんな調子で前進できないでいた私を変えてくれたのは、君だった。
随分と久しぶりだったのに、君は変わっていなかった。楽しい時間も、温かい空間も、昔からずっと変わらなかった。
私はあの時、初めて気が付いた。
私には、君が必要不可欠なのだと。
ただ、君だけが。
5/12/2025, 11:21:11 AM