暁星

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「ただいま!」

誰もいない家の玄関の重いドアを開けると、ほのかに甘い香りが私を呼んでいる。

「あっ!おやつ!」

ランドセルを玄関先に置き、急いで靴を脱ぐ。すぐ目の前にあるキッチンのテーブルには、白い丸いお皿がある。そこには私の大好きなおやつが山盛りに積み上がっていた。
側にはいつものように、白い紙に『しーちゃんのおやつだよ。たくさんたべなさい。』とお手本のような綺麗な字で書かれている。おじいちゃんがどんな顔をしながら書いたのかな?とか考えると嬉しくなって、私の顔も自然と笑顔になった。

「今日は、くるくるおやつだ!手で食べられる!」
ふふっと笑い声も出て、スキップをしながら手を洗いに行く。

おやつはその日によって違ったけど、全部おじいちゃんの手作りだった。ホットケーキの粉は使ってないの、一緒に作るお手伝いをしたことがあるから知ってるよ。でも、もっとおじいちゃんが凄いのは、同じ材料で同じ生地だけどすごーく大きなケーキを作ってしまうこと。
膨らまし粉を入れて、オーブンで焼いた茶色のケーキはバターの味がして、中はふわふわで、外はカリッとしてとっても美味しいの。
今日のおやつはフライパンで、まん丸に少しだけ焼いて、くるくるとロールにするんだ!
材料も知っているよ、トースターで溶かしたバター、砂糖、卵、牛乳、小麦粉、これだけ。
たったこれだけで、こんなに美味しいおやつを作るおじいちゃんは天才!おやつだけではなくて、料理も茶碗蒸し、シチューなんでも美味しく作るの!

おじいちゃんは、あんまりニコニコしないけど優しくて、お勉強も教えてくれて、物識りで何でも知っていて、自慢で大好き。

なんで父娘なのに、お母さんとおじいちゃんはケンカしちゃうのかな……だから、同じおウチのなのにお庭に家を建てちゃったのかな?
大好きな2人が仲良くなりますよーに!

お願いをしながら、今日もほっぺが落ちそうなおやつをパクリと食べた。



『私の当たり前』



7/10/2023, 9:58:28 AM