一ノ瀬

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 ひどく寒さが身に染みる。こんな放課後は寄り道である。
 学校から少し離れた公園には、さまざまな屋台が日替わりで出る。今日はこの寒さにふさわしいたこ焼きだった。僕は定番のソースを、先輩はチーズたっぷりを頼む。
 僕はどんなものでも定番が好きなのだが、先輩が食べているとろとろのチーズがかかったたこ焼きはとてもおいしそうだった。ひとつ交換してほしいと先輩に頼むも、先輩はカフェオレを飲みながらニヤリと笑って聞こえないふりをする。いつも思うのだけど、たこ焼きとカフェオレって合うのだろうか。
 風がしのげる場所に座って、あつあつのたこ焼きを食べながら、なんでもないことをだらりと喋る。それだけの放課後が僕は好きで、だから僕は先輩と一緒にいるのだった。
 ところで、先輩は寄り道の最後に決まってこう言う。
「私の家こっちだから。また明日ね」
 そして手を振って去っていく。その方向が定まったことは一度もない。同じ場所に寄り道をしたとしても、必ず違う方角を指差し、毎回違う道に向かうのだ。そんな先輩の背中を見ながら、僕はいつも少し不安になる。
 先輩はひどくいい加減で、どこまでも気ままな人だ。そのとき行きたい方向を指して、家まで遠回りして歩いているのだろう。そうは思うのに、時々疑ってしまう。先輩なんて、本当に存在するのだろうか。
 先輩を見送りながら、僕は心にまでこの寒さが染みているような気がして、さっき食べたたこ焼きの熱を必死に思い出そうとする。そして、先輩の言う「また明日」だけを信じていようと思う。

1/11/2026, 4:52:57 PM