足音
家族4人暮らし。全員足音が違う。
パタパタパタ
これは母の足音。ゆったりとしているが、やるべき事をするために、効率良く動いている。
ノス ノス ノス
これは父の足音。重みがあり、優柔不断な行動が足音の間隔にあらわれる。
バタドテドス
これは妹の足音。全ての動作がエネルギッシュ。一足踏み出すのに魂を懸けている。
トストストス
これは自分の足音。静かに歩き、ヌルッと現れて驚かれる。耳が遠くなってきた父は私の足音を聞き取れない。
2階の部屋で寝ていると、夜中の1時ー2時頃に足音が聞こえる。大抵はトイレに向かう家族の足音。しかし誰の特徴にも当てはまらない足音が聞こえたことがあった。
ペスペスペス
母のようにゆったりしておらず、父のように重みはなく、妹のようなエネルギーもない。
足音は階段を上り、2階に辿り着く。家族なら自分の部屋のドアを開ける音がするはずだが、足音が止まったまま何も聞こえない。廊下で佇んでいるようだ。
早く眠ってしまいたいのに、目が冴えて聴覚が過敏になる。足音が再開する。
ペス ペ ス ペス ペス
近づいてくる。こっちに来るなと念じながら、目を固く閉じる。
ペ ス ペス
突然、足音が轟音に掻き消された。
ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン
ほぼ毎日出現する暴走族だった。
彼らが去った後、足音は聞こえなくなった。冷や汗でビショビショだったが、布団を出る勇気は無かったため、YouTubeでマツケンサンバⅡをリピート再生しながら眠りについた。
何だったのだろうか。マツケンサンバⅡは今でも大切な子守唄である。
8/18/2025, 11:52:20 AM