「こんな夢を見た」から始まる小説

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こんな夢を見た。心霊スポットに行こうと友人に誘われ、私は廃墟にやって来た。友人いわく、入った人間が必ず変死体で見つかる呪われた場所らしい。
「それを分かってて、何で連れてきた。まだ私は死にたくないんだが」
「そりゃ、肝試しだよ。気になるじゃん、変死の原因」
「そりゃ霊の仕業…」
「そんなわけないよ。霊は人間に触れないのに、どうやって人間を変死させるのさ」
オカルトが好きな割に、妙に現実的なやつだ。
「霊の仕業じゃないなら、何だと思うんだ?」
「んー、この廃墟自体に有毒性の塗料が使われているとか?あ、吸ったらまずい成分が含まれた建材を壁に使ってるのかも!ねえ、君はどう思う?」
「だったら、尚更行かない方がいいだろ。今すぐ帰ろう」
「えー、ガスマスクとゴーグル持ってきたのにー。だったら、僕だけでも行く」
彼はむくれた顔をして、スタスタと廃墟に向かっていく。流石に一人で行かせるのは危険だ。私は慌てて彼を追いかけた。
「結局、来るじゃん。何だかんだ、気になってるんでしょ?」
彼はニヤニヤしながら、ガスマスクとゴーグルを渡した。着用すると、ゴーグル越しに彼を睨む。
「そりゃそうだろ。一人で行かせて死なれたら、寝覚めが悪い」
「はいはい」
彼はスマホのライトを起動し、先へ進む。しばらく廃墟を探検したが、特に目ぼしいものは見つからなかった。
「見つからないねえ…」
「ただの廃墟探検だな…」
「あとは…」
彼は『立入禁止』の札がぶら下がったトラロープの先の階段に視線を向けた。
「あそこだけど…」
「立入禁止だな」
「でも、原因が分からないじゃん。噂通りなら、僕たち変死するらしいし。何も分からず死ぬくらいなら行ってみようよ」
呪われた場所だからって、流石に悲観しすぎな気もするが。どうして彼は死に急ごうとするのか。
「まだ死ぬって決まってないだろ。もしかすると、変死体になる原因にまだ遭ってないだけで」
とにかく帰りたかった。まだ死ぬ気なんかない、彼を説得して帰ろう。
「君は、ここで見つかった変死体ってどんなのか知ってる?」
彼は立入禁止の向こうを見つめながら、質問してきた。
「…いや?」
「死因は老衰なんだってさ。じゃあ変死体なわけじゃないよね。でも、見つかった人たちは十、二十代の若者ばかり。簡単に言えば、体の内部だけが老化して寿命を迎えたって感じ」
「見た目は若いままってことか?」
「そう。だから、僕は有害物質でも出てるんだろうと思ってた。それだったら苦しげな顔をしてそうなんだけど…」
「けど?」
彼は不安げにこちらを見た。スマホに何か文字を打ち込んでいる。
「表情がおかしいんだ。安らかな瞳をしているのに、口は叫ぼうと大きく開いている」
「何だそれ」
「僕が思うに…」
彼は続きを言わずスマホを見せた。
『見てはいけないものを見た。しかも今、階段下から何かが上がってくる音がする。逃げよう』
私が読んで理解する前に彼は私の腕を掴み、走り出した。そのまま振り返らず逃げ帰り、ファミレスで夜明けを待った。その後解散したが、まだ私も彼も死ぬ気配はない。

3/15/2026, 8:35:09 AM