黒猫と青のリボン

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プールからの帰り道、あまりの暑さにいつもの最短ルートではなく、やや遠回りになるがお店がある方角へと足を進ませた。
アイス片手にせっせと足を動かす中、一体のお地蔵さんを見つけ、ふと足を止める。こんなに暑い中彼も直射日光に晒されて大変であると、いつもは気にもしたことがなかったのにその時だけは彼が戦友のように思えて仕方がなかった。なんの気もなしに頭に被っていた麦わら帽子をお地蔵さんに被せる。元々好きで被ってたわけじゃなかったからコイツが役に立つのなら本望だろう。
「こいつをお前に預ける」と、赤髪の海賊になりきる。
お地蔵さんは微笑みを浮かべている。
「おれにはこれがあるからさ!別にいいよ。あちーけど頑張ろうな!!」とアイスを揺らしながら意気揚々と返す。
お地蔵さんは微笑みを浮かべている。
母さんに怒られそうだ…と思いながら今度はもっとカッコイイ帽子を買ってもらおうとちゃっかり算段をつける少年は逞しかった。

少年の後ろ姿を見送る。

麦わら帽子がかすかに揺れた音がした。

8/12/2022, 2:37:24 AM