千春

Open App

 入学式の日、隣の席だった男の子。
 「イケメンくんだなあ」と思いつつ、前の席の女の子とぎこちないお話をしていたら、君はその女の子と知り合いだったらしくて、いつの間にか会話に混ざっていた。そんな馴れ初め。
 思い返してみれば、わたしはその時からずっと君が気になっていたのかもしれない。
 四月になって、六日になって、新しいクラスメイトの名前を眺めていたとき、君の名前がなかったことに涙が出るくらい落胆した。そのあと、落胆した自分に驚いて、次にやりきれない気持ちが溢れてきた。
 新入生向けの部活の案内会に、君は個人部だったから、美術部のわたしのすぐ近くに座っていた。終業式ぶりに見た君は、前よりもかっこよく思えて、君が視線に気づいたのかこっちに目線を向けたときは、慌てて目を逸らしてしまった。
 恋を自覚したのは、小学三年生以来だ。精神年齢が大人になってくるにつれて、恋をするのが恥ずかしくなって、お友達とする恋のお話も他人事みたいにして避けてきた。
 小学三年生の記憶なんて曖昧にも思い出せないし、きっと、あの頃していた恋と今している恋は全くの別物である。
 つまり。わたしからすれば、初恋なのだ。


初恋の日

5/7/2023, 3:44:46 PM