紗夢(シャム)

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【流れ星に願いを】【刹那】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

4/7 PM 11:15

「何がいい?」

 泊まっていくことになった暁に、
 真夜(よる)が寝る前に弾くピアノの曲の
 リクエストを聞いている。

「えーとね……今夜は『星に願いを』の
 気分かな」

 暁が答えると、真夜は直ぐに
 『ピノキオ』の主題歌を弾き始める。
 ゆったりしたテンポと美しいメロディー、
 真夜の指が奏でる柔らかな音色。
 眠りに就くには、良い選曲に思えた。

「ありがとう~、真夜くん。
 何度聴いても綺麗な曲だねぇ」
「そうだな。オレも好きな曲だよ」
「もうね、すごく良く眠れそう」

 弾き終わった真夜に、
 暁が囁くような声で言う。
 それは何より、と微かに笑いながら
 真夜も静かな声で答えた。

「お星様に願い事っていえば、
 流れ星が流れきるまでに3回願いを
 唱えられたら叶うっていうのは、
 やっぱり迷信なのかな?」
「また唐突な……」
「だってぇ、宵ちゃん。3回だよ?
 流れ星が流れるのなんて、シュンッ!
 ――って感じで一瞬でしょ?
 そんな刹那の間に3回もお願いするなんて
 無理ゲーじゃない?」
「……まぁ、ほぼ不可能かもね」
「難易度ベリーハードどころじゃないよね。
 カオスとかルナティックの域だよ」
「――何か叶えて欲しい願いがあるのか?」

 愚痴をこぼす暁に、真夜は穏やかに
 問いかける。

「うん。宵ちゃんと真夜くんが
 いつでも幸せでありますように」

 暁は間髪いれず、そう返答した。

「……なるほど。それは3回唱えるには
 文字数が多過ぎるな」
「その前に、するなら自分のための
 願い事にしなさいよね」

 アタシたちのために、難易度MAXな
 流れ星への願い事をする必要はない。

「宵の言う通りだよ。オレも宵も、
 暁がそうやってオレたちのことを
 思ってくれてるだけで幸せだから」
「えー……? ……じゃあ、春休みが
 終わる前に、天明(てんめい)くんも
 誘って4人で遊びたい、とか」
「更に文字数増えてるじゃない」
「それは星に願うまでもなく、天明次第で
 叶うだろうから、明日聞いてみよう」
「そうする~」

5/7/2023, 8:39:02 AM