犬の話をしていたとき。
「柚さんは、大型犬っぽい」
「そうかな。汐ちゃんは大型犬好き?」
「中身が柚さんなら巨大型犬でも飼いたい」
「ふふ、それはよかった。」
私の中では、いつものなんでもない会話だったからすぐに忘れてしまったけれど、少し経ってから、
「私が犬になる話とかしたね。」
「汐ちゃんが飼ってくれるんでしょう?」
って言うから。かわいいから。想像する。
きっと、私が家に帰ったら
「汐ちゃん。お散歩の時間だよ。」
って言って、お昼寝もスマホも、
もふもふの体で阻止してくる。
お散歩中のゆずさんはきっと
いつもと同じでいつも違う景色から
色んな連想をして
物思いにふけるんだろう。
そこから少しだけ、
私に共有してくれたりするんだろう。
朝はその日の夢の話を、
夜はその日の月や星の話をしてくれる人だった。
ぼーっと夕暮れを眺める柚さんを
後ろから見守る。
「綺麗だね、汐ちゃん。」
毎日毎日、必ず言ってくれそう。
夕日に透けるふわふわの毛を秋風になびかせて
私に微笑むゆずさんはきっと
夕日なんかよりもずっと綺麗で眩しくて
犬になっても抜けない
あの優しさが引き起こす脆さからくる儚さで
私の不安を煽る。
うん、柚さん、綺麗だね。
..今度は居なくならないでね。
ふわっと優しく私を撫でる秋風にどうしようもなく泣きそうになる。
11/15/2023, 6:34:17 AM