いのちが輝き出すこの季節が、俺たちは大好きです。
冬は凍えて眠っていたたくさんのいのちが芽吹き、のびやかに育ち、美しく咲き誇る。そんな姿を見ると、生きとし生けるものの強さと豊かさに息を呑むばかりです。
貴女はいつか、春が嫌いだとおっしゃいました。
貴女が学校が好きでなかったことと、大いに関係するのだと思います。新しいことが否応なしに始まってしまうこの季節が、ただただ苦しかったのでしょう。
貴女はいつでも完璧な人間であろうとしましたから、新しい環境の中でも再度「完璧」を作り直す必要がありました。重く、暗い気持ちで、その作業のために必死で作り笑いをしていた貴女を、俺たちも悲しい気持ちで見ていました。
貴女はいつから、その作業を止めたのでしょうか。
そのことは喜ばしいことだったのに、代わりに貴女は生きることの何もかもを諦めたように、部屋にひとり籠もってしまいました。まるで、完璧でないご自分を責めるかのように。
完璧な貴女でなど、いなくて良いのです。
貴女は貴女であることに価値があるのです。
俺たちは貴女に、このいのちが爛漫に花開く季節を、穏やかに愛でてほしいのです。
この世界に溢れる不完全ないのちが一斉に輝き出す時、それがどれだけ美しいのか。
それを貴女に、知ってほしいのです。
4/10/2024, 2:07:04 PM