「3年も『書く習慣』で連載モドキしてるおかげで、キャラクターというか組織というか、それはけっこう増えたから、ネタは色分けしてるわな」
先月「君と見た虹」のお題を片付けた某所在住物書きである。今回は別の七色を書くために、「医療 七色」を検索したり、「食の七色」を調べたり。
結果、面倒になって検索スクショをすべて消した。
何が悲しくて健康食としての「七色料理」を説教よろしく書かねばならぬのだ。
「フルーツサンドイッチにフルーツジャムで七色、とかならアリか……?」
いちご、みかん、黄色と緑のキウイ、以下略。
できないこともない。 ただ青と藍色は?
――――――
先月のいわゆる「七色」、虹のお題では新札の、ホログラムを七色に見立てて投稿した物書きです。
今回は別の七色のおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこはたとえば、自分の世界から別世界への渡航申請を受理したり、密航者を取り締まったり、
あるいは、滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムが他の世界で悪さをしないよう、回収して適切な方法で保管したり、活用したり。
いろんな世界のために、いろんなことを、アレコレやっている組織なのでした。
ところでその「世界線管理局」の局員、実は最近、都内某所に出没しておりまして、
理由がなんとも単純明快。
滅んだ世界から逃げ延びてきた難民が、密航の形で「こっちの世界」に渡ってきまして、
東京の雑踏に、紛れて隠れ住んでおるのです。
異世界からの密航は、「その世界」の文化と生活と、その世界自体の独自性を崩すリスクです。
ましてや異世界渡航が夢物語でしかない「こっち」の世界に、本物の異世界人が入ってきて、好き勝手に異世界技術を行使しては。
「こっちの世界」の「常識」が壊れてしまいます。
こっちの世界が「こっちの世界」のまま、自分たちの知識と技術と運でもって、
どこかの真似事ではなく、独自の技術を確立して、独自の成長を成し遂げられるように。
世界線管理局は今日もどこかで、異世界人による密航や違法行為を、取り締まっておるのです。
ところで今回のお題は「七色」です。
実は東京から異世界の密航者を、管理局内の難民シェルターに護送してきた管理局員が、
護送の途中で「七色」の美味を昼食に食べまして、
本人、その料理をいたく気に入ったのに、
美味かったその七色料理の名前を忘れたのです。
「くそっ、思い出せん、もどかしい!」
ぐるるるる、うぐぐぐぐ!
七色のお題回収役、七色料理を東京で食ってきた特殊即応部門長、ルリビタキが頭をガリガリ。
七色料理の名前を思い出せず、悶絶しています。
「美味かったんだ、甘じょっぱいというか、しょっぱ辛いというか、唐辛子の少しの辛さがだな、
そのタレと一緒に食った肉が最高だったのに!」
あの美味は何だ、何という食い物だったんだ。
管理局に就職してから異世界グルメを覚えたルリビタキは、自分のデスクで「七色」を食った記憶を、掘り返して、掘り返して、
名前だけ思い出せなくて、がるるるる、ぐるる!
「召し上がった店にもう一度、行ってみてはいかがです?それはご存知でしょう?」
部下のツバメがやってきて、ルリビタキに新規出動要請のリストを渡しながら正論をぽつり。
「それが分かれば苦労しない」
正論のツバメにルリビタキ、反論します。
「護送対象が『どうしても東京を離れる前に食っておきたい』と行った飯屋だ。俺には分からん」
「和洋中、伊仏、どのあたりの料理でした?」
「漢字ばっかりだった」
「和食か中華ですね。で?」
「七色くらいあった」
「彩りが多いなら、和食かもしれませんね。色は」
「茶色と赤とオレンジと、黄色と濃い茶色とk」
「待った待った。待ってください。
それ『七色』って言います?」
「七色だろう。茶色、赤、オレンジ黄色、濃い茶色、あと黒と白。そら、七色だ」
「白は白米として」
「こんにゃくだった」
「こんにゃく」
ポカンとするツバメを置いてけぼりに、ルリビタキは美味の七色を、遠くを見ながら思い出します。
「美味かったんだ……」
最終的にルリビタキ、都内の現地住民に情報を渡して、料理の名前を推理してもらったところ、
無事、それが「野菜マシマシのピリ辛あんかけごぼうこんにゃく」であったと判明。
『そりゃ分かりませんよ』。正解を聞いたツバメは大きく、短いため息を吐いたとさ。
3/27/2025, 9:51:38 AM