な子

Open App

【木漏れ日】

木漏れ日を見て逃げた。
森の奥まで走った。
日に当たってはいけない。
人々にバレてもいけない。
「おーい」
誰かの声が聞こえた。
少年は息を殺して気配を消す。
決して吸血鬼だとバレないように。


「あなたがいけないんでしょ」
「きみだって」
森の入口で少年の両親は言い争う。
トマトジュースしか飲む息子に夫が冗談で言った。
そんなに飲んだら吸血鬼になっちゃうよ、と。
息子は信じて、森へ逃げて。
そして今日も帰ってこない。

5/7/2025, 8:11:47 PM