静寂に包まれた部屋
「とにかくこの国はうるさいッ!」
国王の口癖は毎度、高官たちを黙らせた。
「戦闘機も車も民衆も、騒がしくてならん!」
「お言葉ですが陛下。戦闘機は他国との競争に不可欠です。生活音はすでに最小限。これ以上は……」
「ならんものはならん! 騒音を出した者は処刑だ!」
臣下たちは狼狽えた。だが王に逆うことなどできなかった。その鶴の一言で、夜泣きの赤子や無邪気な子どもたちが処罰された。民衆は震え上がり、国はますます静かになった。
暴君の住まう邸は、防音対策が施された重厚な造りをしていた。それは大枚をはたいて世界各国から集めた最新技術が使われたものだった。
「まだまだうるさいわッ!」
「今の技術では、あの設備で限界です」
「もっと静かな家にしろ! 方法はあると言っただろ」
「しかし、その方法にはリスクがありまして……」
「何でもいいからやれ!」
翌日、国王の家を密閉し、中の空気を抜く作業が執り行われた。作業音に当たり散らしていた怒声は、空気の密度と共に小さくなっていった。空気に変わって静寂が満ちた部屋で、暴君は音を立てなくなった。
こうして国は静かになった。その空には凱歌がよく響いたという。
9/29/2024, 3:50:41 PM