友人の彼女を抱いた。
予期していなかった友人の死を受け、悲しみと憐れみと絶望の中で、めちゃくちゃに壊すように抱いた。
惚れてはいなかった。別の形で愛していたけれど。おそらくそれは彼女にはわからない。私のことを嫌っていたから、どうでもいいのかもしれない。
十年後、久しぶりに再会したが、やはり彼女は変わっていない。書簡を届けに来た私を睨みつける目はあの頃のままだ。
それから何度か会って話す機会はあったが、距離は開くばかり。
「君は変わらないね」
「は?馬鹿じゃない?変わらないものはないんだよ」
「私への態度が昔のままだ」
「どうでもいいんだけど」
冷たくあしらわれる。
解せない、だって変わらないじゃないか。
「相変わらずよく怒るし」
「怒ってない」
「怒ってるじゃないか」
「しつこい男だね」
「待ちたまえよ」
何処かに行きそうだったから、咄嗟に手を掴んだ。驚くことに彼女は振りほどこうとはしなかった。
「アンタといると、昔、みんないた頃を思い出すから……」
辛そうな声と横顔。
やっぱり変わらない、あの頃のままだった。彼女の中の時間は止まってしまっていた。
何も言えずに黙っていると、彼女は私の顔を振り返って言った。
「いつまで掴んでるのさ……手」
気まずそうに、ほんのり赤くなった顔を確かに見た。
「ああ、君の言う通りかもしれないね」
「何の話を」
「変わらないものはないって、ね」
彼女の一途さは知っている。別に添い遂げようとは思ってないけど、意識してくれたのはほんの少し嬉しかったかな。
【変わらないものはない】
12/26/2023, 11:24:00 AM