Frieden

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「降り止まない雨」

今日は雨だ。最近は晴れ続きだったから、雨が降るのは随分と久しぶりな気がするな。
しかし、どうしたものか。今日は買い物に行きたかったんだが。

「おや!!!出掛けるつもりだったのかい?!!それならちょうどいい!!!」
……何がどう「ちょうどいい」んだ?

「まあキミのことだから雨を理由に買い物に行かないつもりだったのだろう!!!しかし!!!ボクの手にかかれば!!!雨でも出掛けたくなるに違いない!!!」

まーた変なこと考えてる。今日は何するつもりなんだ?
「ふふん。今日はねぇ……。」
「カタツムリを探しに行こう!!!」

なんでまたカタツムリを……?まさか捕まえてオーブン焼きにするとか言い出すんじゃないだろうな。

「まさか!!!いくらボクがマッドサイエンティストだからってさぁ!!!なんでも食べようとすると思うことなかれ!!!ただほとんど見たことがないから探そうと思ってね!!!」

いや、マッドサイエンティストになんでも食べようとするイメージはないけどな……。

「キミもカタツムリを見てみたいだろう?!!さあ、行くよ!!!」
なぜか自分も行くことになってしまった。

朝から降り止まない雨の中、傘を差して出かける。
傘を差すのは久しぶりかもしれないな。

「ねぇ!!!どう?!!レインコートを着てみたよ!!!似合う?!!」
はいはい。似合ってるよ。

……にしても、ちゃんとカタツムリのいそうな場所のあたりはついているんだろうか。
流石にこの雨の中で延々と探し続けるのは大変だ。

「もちろん!!!そう言われると思って見られそうなところは押さえてあるよ!!!それじゃあ、河原に行こうか!!!」

河原にカタツムリがいるのか……?まぁ、自然豊かなところだったらそういうのがいてもおかしくない、か。

さて、探s「いたー!!!」早いな。
「ほら!!!見て見て!!!ちっちゃいね!!!」
殻の直径が1cmくらいのカタツムリがいる。

「へへ、かわいいね〜!!!ボクには及ばないが!!!」
「他にもいるかな〜!!!」
走っていってしまった。

小さいカタツムリだな。
……こんな小さいのに、自然をたった一匹で生きていかなきゃいけないなんて厳しいもんだ。

あんまり自然に手を加えるのも良くないことなのだろうが、せめて鳥に食われないように草の裏側にカタツムリを避難させておくことにした。

元気でやれよ。

「おーい!!!こっちにもいるよー!!!」
自分を呼ぶ声が聞こえる。
さて、行くか。

眩しいと思って空を見上げる。晴れ間が見えた。
あれだけ雨が止まなかったのに、あっという間に晴れたな。
……もしかしてあいつが天気を変えた、とか?

「違うよー!!!キミ、全然天気予報を見ていないね!!!午後には晴れるってあれだけ言っていたじゃないか!!!まあいい!!!ちょっと大きいのがいるから見たまえ!!!」

どれどれ。たしかにさっきのより大きい。
ちゃんと厳しい自然を生き延びたんだな。
干からびる前に、元いた場所に戻るんだぞ。

なんて言いながら近くの草むらに移しておいた。
「キミにもそういう一面があるんだねー!!!」

「あ!!!あそこ!!!影がキラキラしているよ!!!晴れた川の水面が、木の陰を照らしているんだね!!!いつまでも見ていられそうだよ!!!」

次から次へと忙しいやつだ。
「ところでさ!!!キミは何を買いに行くつもりだったんだい?!!」

卵と肉と、あと消耗品かな。
「なるほどね!!!それじゃ、そろそろスーパーに行こうか!!!」

そう言って住宅街の方に足を向ける。
見なれた街並みを眺めつつ、スーパーへと向かった。

「おや!!!この建物、耐震構造もしっかりしているが!!!壁の塗料が非常に興味深い!!!」

「見てごらんよ!!!このお家の外壁材!!!あ、見ただけじゃわからないかもしれないが……カタツムリの殻と同じ構造をしている!!!」

「簡単に言うと、カタツムリの殻は非常に汚れに強いのさ!!!ニンゲンのみんなは自然からしっかりと科学を発展させているわけだね!!!素晴らしいや!!!」

へぇ、そんなことよく知ってるな。
「もっと詳しく知りたいかい?!!スーパーに着くまでの間、みっちりとお話しようじゃないか!!!」

あんたは嬉しそうに話を始める。
そっか。マッドサイエンティストだからこういうものの知識はあるんだっけか。

「まあ専門外だけどさ!!!いいだろう?!!聞きたまえよー!!!」
嬉しそうに話を始めたから、自分はゆっくりと歩くことにした。

5/26/2024, 12:24:54 PM