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目が覚めるまでに


ガチャリ、と扉が閉まり、足音が遠くなって消えていくのをゆっくりと待った。すっ、とまぶたを開けて、音を立てないように起き上がる。
繋がれた鎖の鍵を、音がしないように開けて足を解放する。
閉じられた扉に鍵がかかっていないのは、よく知っている。鎖で逃げられやしないと踏んでのことだろう。
でも、それが好都合だった。
慎重に扉を開き、足音も、呼吸さえも殺して、外へと続く扉に向かう。
どうせ、玄関の扉の音でバレてしまうのはわかっているから。だから、玄関から先は走るつもりだった。
あの人の目が覚めるまでに、少しでも遠くへ。逃げなくては。
逃げて、逃げて。伝えないと、

8/3/2023, 1:47:31 PM