Acogare

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溢れた星は一つずつ掬い上げていけばよいのです。
縁壱は夢の中で優しい朗らかな声を聴いた。それは天の声であったか。まだ明け方であるのに飛び起きた縁壱は、泣いていた。大粒の涙が溢れた。一切の煌めきもない哀しみの涙だった。今日もまた中途半端な自分と共に生きていかなければいけない運命に絶望した。ただ何時もより早く起きてそれと共にいる時間が増えたのを憎むのに、相手は天でも神でも何でも構わなかった。
縁壱は幼少期から金に困らない生活をする位には裕福であった。其れに加え縁壱は賢かったので世の中というのを解った気でいた。然し成長を重ねるにつれ、彼は賢い故に自分の生きている理由というのが知りたくなった、いや分からなくなったのかもしれない。
何をするにも苦労しない生活というのは歳を重ねるだけで貫禄も何もつかない、其れに対しいつの間にやら心の水分だけ奪ってゆく。其れは楽しみや悲しみ、苦しみというのが他と違って無いのである。
見上げた空には溢れる程沢山の星が煌めいている。其れ自体はとてもちっぽけであるのに、自分で燦々と光っていたのだ。対して縁壱は、光れなかった。ずっと他より大きな石ころのままで、自分で煌めくほどの熱情も、泥臭さも持ち合わせていなかった。
枕元には煙管がひとつ。縁壱は其れをふかしながら今日も街ゆく人の影を追っていた。

3/15/2026, 9:23:50 PM