朝倉 ねり

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『時を紡ぐ糸』

ぼくは蚕です。
卵生まれの桑の葉山育ち、脱皮は4回目が終わってもう少しで5回目の脱皮をしたいな、なんて思っている普通の蚕です。
今日も、大きな肌色のナニカが桑の葉山を大きくしました。モリモリ食べて、脱皮のために力をつけます。

5回目の脱皮が終わった蚕です。
ぼくが生まれてから、だいたい一月が経ちました。
周りのみんなと『もうそろそろサナギになりたいね』なんて話をしています。

ぼくは決めました。
明日、サナギになることにします。
大きな肌色がぼくの背中を撫でてくれるのが好きですが、サナギになって羽化して、飛べるようになったら大きな肌色にまとわりつきにいこうと思います。
大きな肌色を、僕が撫でるのです。

サナギになるためには、繭を作らなければなりません。
繭を作るのに、2、3日かかってしまいます。
ぼくが生まれてから初めての大作業です。
でも、成虫になるために頑張ります。
頑張って、「空」というところを飛ぶのです。

サナギになれば、成虫になるまで1度お休みします。
だから、また成虫になってから会いましょう。
ふふ、楽しみだなぁ。





「お、今日は沢山繭になってるな。じゃあ、鍋で煮ようかな。」
グツグツ、グツグツ。

「よしよし、良い絹糸になるんだぞ。」


ぼくは蚕です。
ぼくの成虫になって「空」を飛んで、大きな肌色を撫でる夢は潰えました。
ぼくは今、繭だけ取られて糸になりました。

ああ、サナギになりたいって言うんじゃなかった。

ぼくは刺繍糸になりました。

11/26/2025, 12:02:30 PM