満員電車の中で本を読む。猫が探偵をする本。ドアが開いて、人が去り、人が再充填され、また電車はゆく。ゆりかごよりもぎこちなく、前後に左右に揺れて、時折文字を追う目が行から飛び出して交通事故を起こす。不意に外れたその視線の先には同じ本を読む学生がいた。座っていて、頭がおっこちそうなほど見入ってる。ページの端をチラリと見れば、私と同じところ。向こうが集中力を切らしたせいか、ふっと顔を上げたので私は何気ないふりをしてまた本に目を戻した。満員電車。私たち二人だけの同盟。
3/31/2024, 7:54:44 AM