小絲さなこ

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「旅するように」



何もかも捨てて、知っている人がひとりもいないところへ行きたくなることがある。

家族もなく、友達と呼べるような関係の人もいない。
知り合いはいるが、お互い自分自身のことを詳しく話したこともないから、私がいなくなっても気にも留めないだろう。

幸いなことに、仕事は何処にいても出来る。
海外に出るのは色々と手続きが面倒そうだし、日本食が恋しくなるのは確実なので、日本国内であれば何処でもいい。


ひとつの地域に三年居るか居ないかの生活は、ある意味とても気楽だ。
その反面、面倒だし、時々こんなふわふわしていて良いのだろうか、とも思う。

だが、ひとつの地域にずっと居ると見えないものもあるのだ。

終わりを決めるということは、始まるということ。


環境を強制的に変えて、リセットをしないと息が詰まる。

それでも、時々思うのだ。
流れて、流されて、たどり着いたその先は、何処なのだろう、と。



地図を広げて、布団に寝転がる。
目についた街の名前が綺麗だったというだけで、其処に決めた。


いつか、ずっと此処にいようと思える日が来るのだろうか。

その時が来たら、今まで荷物になるからと買っていなかったベッドを買おう。




────終わりにしよう

7/15/2024, 2:44:51 PM