美夜

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 『君と一緒に』


 君に初めて声を掛けた少し前。
 君は体調を崩し、数日会社を欠勤した。
 俺は気が気じゃなくて連絡を取りたかったけど、知ってるのは会社のメアドだけで、直接の連絡先を知らなかった。
 遠回しに近しい女の子に様子を窺ってはみたけど、あまり深い情報は得られず、気になって仕事が手につかない程だった。
 一人暮らしらしい彼女は、今頃一人で苦しんでいるんじゃないのか、ちゃんとご飯は食べられているんだろうかと、数日そればかり考えていて、ふと……こんな時に傍に居られる存在になりたいと、強く自覚したのだった。
 彼女が出勤してきた日、それでも他愛もない会話しか出来ない自分に、もどかしさを感じていて。
 (何かきっかけが欲しい。)
 そう望みながらズルズルと日々は過ぎ、気付けば忘年会シーズン。
 (君と一緒に美味しいご飯が食べたい。)
 最初の一歩は、その揺るがぬ強い希望に動かされたのだった。
 (君と一緒にすべてを感じたい。)
 勇気を持てて本当によかった。


 「ねぇ、今日は何食べたい?」
 彼女の笑顔を今は当たり前に独占出来ている。
 「君の好きなものがいいな。」
 あの頃と変わらぬ気持ちで、今日も君と一緒に居られる幸せに感謝している。

1/6/2023, 11:06:36 AM