MARBLE

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君の新居にいった。
引っ越した後で初めての訪問。

街を散策して、美味しそうなご飯やさんを見つけて
今度はここにいってみようか
なんて話をしたよね。

ベランダから眺める、慣れない景色と街の空気に
君の輝かしいスタートを実感した。

目の前で、徐々に開かれていく新しいステージに
君だけが躊躇なく足を踏み入れていて、
私はまだこの場にとどまりたいような、
そんな気持ちから足がすくんで動けないでいた。
私は手だけを伸ばして、かろうじて君に触れていた。

結局、君の顔をみたのは、あの時が最後だった。

私の日常から君がいなくなって
私の心に影を落としていた孤独や不安、卑屈さ
みたいなものも時間と共に薄まっていった。

君を受けとめ、見守っていくほどの
包容力や安定が私にはなかったんだと思う。

これでよかったと思っている。
私の心を守るためでもあったから。

でも、君がいる街にはまだ行けそうにない。

85:君と最後に会った日

6/26/2024, 11:54:44 AM