君を探して
君を探して、もう何年になるだろう。君を求めて、君を探して、どれだけ歩き回ったことか。
私の妻は突然居なくなった。それ以来、親類や、知る限りの妻の友人のところに訪ね歩いたが、誰もが気の毒そうに哀れむように私を見るが、色よい返事は得られなかった。
毎日、新聞の事故の欄はくまなく見て、テレビニュースも欠かさず見ている。でも、妻に関連しそうなことは、1つもなかった。
70歳過ぎでは、まさか男を作って出ていったのではあるまい。それなら、私のどこかに気に入らないところがあったのだろうか。
いろいろ考えたが分からない。
「おとうさ〜ん」
玄関のほうが騒がしい。娘が小さな孫を連れて来たのだ。一人で居る私を気遣って、時々こうして来てくれる。
「おうっ、由美子、カリナも来たのか!カリナ、こんにちは」
「おじいちゃんこんにちは!」
年少組のカリナは、とても可愛い。遊んでいる横顔を見ているだけで、心が和む。
お茶を淹れた由美子が隣に座って「ねぇ、お父さん」と話しかけてきた。
「どうした?」
「もう、お母さん探すの止めて。藤沢の叔父さん家なんか、今月5回も行ったんですって?」
「行ったけど、5回?そんなに行ったかな」
「ね、お母さんのことは諦めて。太田の伯母さんも何度も来られて迷惑してるって言ってたよ」
「だがなぁ、春子に帰ってきてもらいたいからなぁ」
「帰って来ないのよ、悲しいけど」
「見つかってみないと分からないだろう」
「お父さん、お母さんは亡くなったの。去年の秋口に、脳出血で倒れてそれっきり!」
No.137
3/15/2025, 2:53:57 AM