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「その言葉って、なんだか次は無いみたいじゃない?僕その言葉そんなに好きじゃないんだよね」

別れ際、私の告げた言葉に対して彼は眉を潜めてそう告げた。思い返せばいつも、彼は誰かとの別れ際「またね!」と爽やかな笑顔を添えて手を振って別れていたのだったか。

ガサツな私と違って、彼は繊細な人だった。言葉の意味ひとつとっても気にするような、そんな人。だからこそ、こんな言葉が出てくるのだろう。
彼にそう言われると、確かにそんな気がしてくる。勿論、これが最後の別れという訳では無いけれども。

彼が嫌がる以上、さよならの言葉は飲み込んでにっこりと笑って手を振った。

「じゃあ、またね!」

12/4/2024, 9:16:52 AM