なみ

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※ BLです。苦手な人は見ない事をお勧めします。

「レモン」(pixivのお題より)

思えば、青春時代と呼ばれる俺の小・中学時代はとても痛かった。
今も高校生だからまだ青春と呼べるのだろうが、中学生で止めておきたい位に酷かった。
青い春で青春と呼ぶなら青すぎた。
青すぎて、痛いと言うより酸っぱかった。
口に入れても目に入れても思い切り閉じてしまうレベルに酸っぱかった。

何をやらかしたかと言うと、まぁ一言で言うと己を知らず、怖い物知らずのジャイ○ンだった。
ジャイ○ンは良い。意志が強く、我を通し、相手を屈服させる力がちゃんとある。
俺にはそう言うのが備わってないくせに、リーダーになりたがり、相手を内心で見下していた。
かなりクラスの皆を振り回した事だろう。
思った事は考えずに全部口に出していたし、クラスの皆に謝りたい……。

今は電車で40分掛かる高校に通っている為、同中は少数だ。

俺の中学までが酸っぱい物だと気付かせてくれた出来事は小3から同じクラスになった隼人《ハヤト》の存在で、息が合うから、俺のやる事全部乗っかってくれて、サポートしてくれて、一緒に居るのが楽しくて……。

「俺、隼人の事好きかもしれない。一生一緒に居よ!」

何も考えず、言ってしまったんだよなぁぁぁぁ!!!!!
軽く冗談で流してくれたら良かったのに、隼人は固まって。
俺も今何言った?!って冗談に出来なくてパニックになって……。
2人固まってる時に、授業始まって席に着いて…。
間に授業が入ったから、その後はお互い触れない様にしたから普通には戻れたけど……。

そこから、今までの自分について考えた。
俺がクラスの代表やって良かったのか?
体育祭でデカい横断幕作ってフェンス登ってウェーイの記念撮影やって良かったのか?(先生には怒られていない)
近くも無いのに、休んだヤツの家に宿題やらプリントやらついでに菓子も付けて持って行って驚かしてみたり。
自分だけ楽しんで、ありがた迷惑。うざいって思われてたんじゃないかって思うと、怖くてもう何も出来ない。
酸っぱい、酸っぱい。
レモンの皮を剥くのに親指爪立てて、汁が目に飛んで来た位に自爆し悶えた。

「慶太《ケイタ》、今日大人しいじゃん」
通学で電車に揺られながら過去の自分に悶えていると横から話し掛けられた。
俺より5cm背の高い隼人は少し首を傾げて俺の顔を覗き込み、目が合うと微笑んだ。
近くではなく、偏差値が高い遠くの高校に頑張って行きたいんだと話した時、隼人も一緒に勉強すると言い、今は一緒に電車で通っている。

あの時、何も考えずに言ってしまった言葉。
冗談に出来なかった言葉。
有耶無耶になったけど、消えない言葉。
またいつか言う日が来るだろうか。

中学卒業時は同じ身長だったのが、この数ヶ月で5cmも差が付いている。
通学に時間が掛かるからとお互いクラブに入っていないが、隼人は運動が出来る。
多分これからモテ期が来るだろう。
その内、彼女が出来て俺から離れて行く時が来るのかな。
ズキリと痛む胸を抱えながらも、あの言葉を聞きながらも、こうして変わらず側に居てくれる。
それがほんの僅かな希望になっている。

俺のレモンの様な思い出は、高校で蜂蜜を足され、マイルドで美味しい蜂蜜レモンに変わるといいなと横目で隼人の横顔を盗み見ながら思った。


<補足>
慶太の失態は、本人が思うほど深刻な物ではなく、皆楽しんで付いて行っていた物で、隼人もそんな慶太だからサポートして一緒にいるって関係です。
でも本人からしたら黒歴史なんだな〜笑

10/5/2025, 7:19:24 AM