猫背の犬

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「やりたいことってなんだろ」
「急にどうしたの」
「いやー、事前に計画しててもさ、それが上手くいことってないなって思って。なんだろ。自分の意思でやってると思っていても、自分の意思ではないみたいな……自分のやりたいことがわからなくなってくるんだよね」
「あー……まあ、でもそれってさ、考えてもわかんないやつじゃない? とりあえず、これすき! みたいなやつを片っ端から手をつけていくしかなくない? それで、投げ出さずに残ったものが、やりたいことな気がするけど」
「んー」
「そうやって葛藤する気持ちもわかる。けど、たぶんそれも必要なことなんだよ。なにかを見いだすには膨大な時間がかかるらしいよ。わかんなくなって投げやりになるのも、自分がやりたいことにたどり着くために必要な過程なのかもしれない。まあとりあえず、そんなに深く考えすぎないでさ、興味があるものはなんでもやってみたらいいんじゃないかな」
「そうだね。そうしてみるよ。でもさあ……時々苦しくなって、どうしようもなくなったら、どうればいい?」
「そのときは、こうやってまた話そうよ」
「いいの?」
「いいよ。え、だめなことって、あるの?」
「優しいんだね、ありがとう」
「別に、そんなことないよ。でもまあ、僕は君にだけは優しいかもしれない」
「なんだそれ」
「んー? だってそれが僕がやりたいことだから。僕は君に優しくしたんだ」
「なるほど……やっぱ、優しいね。そういうところ好きだよ」
「そりゃどうも」

6/11/2023, 7:19:46 AM