それは、ある薄明の日だった
雲がオレンジ色に染まり、カラスがかぁかぁと、子に帰るようにと促していた。
住宅街にひっそりと存在している、地元の人しか知らないような抜け道。
そんな道を、一人の女子学生が歩いていた。
紺のブレザーに、同じ色のチェック柄のスカート。
沢山のキーホルダーをぶら下げたスクールカバンは、沢山の教科書でパンパンになっている。
歩きスマホをしていた学生は、抜け道を出た瞬間、目の前のだれかとぶつかってしまった。
スマホが手から弾けて地面に落ち、学生も尻餅をつく。
「うわぁっ!ご、ごめんなさ……」
見上げながらそう言った言葉は、青ざめた顔でキャンセルされてしまう。
それは確かに人だった。人の特徴を持っていた
しかしその頭部は、避難生活で使うようなランタンに置き換わっている。
安心させるであろう光は、薄明の色と混ざり合って、鳥肌が立ってしまう、不気味な色。
服は父親のようなスーツを身につけ、白手袋をはめ、ネクタイをキツく締めている。
SNSのTLだったら、異形の一次創作としていいねを押され、フォトイベントならコスプレとして存在している、そんな存在。
「おや…すみません。お怪我はありませんか?」
一体どこから発せられているのか分からない言葉は、怯えている学生には届かない。
ランタンの化物は、あぁ、と理解し、学生の目線に合うようしゃがむ。
「貴方……私の顔が、見えていますね?」
学生の心が、カイロのように暖かくなる。
彼女はその感覚を知っていた。
恐怖と一緒に混じり合う、この感情を表す言葉
彼女は後に思い出した
その日が、初恋の日だった。
お題『初恋の日』
5/8/2026, 5:05:14 AM