便利な時代になった。
今や私達は、指一本あれば見たものをそのまま保存出来る。写真とは素晴らしい。アルバムをめくる行為は、過去を旅すると同義である。
人生の節目の数々。幼き自分と若かりし両親。時には、二度と会うことの叶わない人々。
全てを忠実に、客観的に。脳による補正のかかっていない世界を写している。
しかし私は思うのだ。
補正のかかった世界こそ、私にとって本物の世界であったのだと。
幼き頃、世界は実際よりも、もっとずっと広かった。
校庭は、大陸に広がる砂漠だった。
小さな夏祭りでも、初めて見た花火は太陽よりも明るかった。
父の背中は、例え星が降ってきたとしても私を守ってくれたはずだ。
同じ時間、同じ場所で、私と貴方で一枚ずつ写真を撮ろう。
その二枚には全く同じ景色が映る。
しかし、私には私の、貴方には貴方の、それぞれ全く異なる世界がそこにはあったはずなのだ。
過ぎ去った日々。そこにあった世界は私にしか分からない。
だから写真が残っていようとも、それが私にとっての本当の世界だったとは思わない。
毎日をきちんと見つめよう。
それを思い出に残すことは、私にしかできないのだから。
3/10/2026, 8:35:05 AM