「ねえ、今年はどうするの?」
「そうだねえ…」
問われているのは帰省のこと。
例年通りならば年末には帰省し、
両親祖父母や親戚達からの面倒な追及を躱しつつ
どうにかして時間を潰し、
そうして二人で暮らすには狭すぎるこの部屋に帰ってくる。
「面倒かも。適当に理由つけてさ、一緒に年越ししようよ」
「いいの?家族で集まる機会は大事にしたほうが…」
「それはそうだけど」
来年からは自分は学生ではなくなる。
彼女の方も実習などで忙しくなるらしく、
二人でダラダラ過ごせる冬休みも今年まで。
「まだ一緒に年越ししたことないからさ。さいごかもしんないし」
「嫌なこと言わないで?」
「だって、本当のことだ。それに2人とも家にいない時間のほうが多くなりそうだし、お互い年末も年始も無いようなもんでしょ。だからいいのいいの」
「いいのかなぁ」
「いいの。一緒に年越しそばたべよ」
これからきっと顔を合わせる時間がどんどん減っていくけれど
だからこそ二人で居られる瞬間を大事にしたい。
「…分かったわ。私、紅白見たいんだけどいい?」
「え!…あ、そっか。好きなアーティスト出るんだもんね」
「ありがと。見終わったら好きにしていいからね」
「はぁい」
多分、お互い一人でも過ごしていけるけど
相手が立ち止まったときにまた一歩進むための理由になりたい。
二人で過ごした思い出がきっと自分と彼女の原動力になる。
他愛のない会話がまたできる日を心待ちにして
日々を過ごしていくことになるのだろうなと予感した。
12/28/2024, 5:05:32 PM