窓の中から見える景色は、とても美しくて、希望に満ち溢れているように見えた。少なくとも、大人達が話す(世界)とは比べ物にならないくらい。ここにいれば、幸せな生活が送れると、大人達は言った。でも、僕はこの生活には幸せを感じられない。ただただ生きるくらいなら死んだ方がマシだ。遠くで、蝉が懸命に鳴いている。それと共鳴させるように、僕は窓を突き破って外へ出た。奥から、大人達の叫び声が聞こえる。でも、僕は振り返らない。きっと、世界は僕が楽しいと思うもので満ち溢れている。それがいくつ消えたとしても、また探せばいい。この世界は美しい。そう信じたいんだ。
あの子が、私のもとから去っていった。あれだけ、外の世界は危険だと教えこんだのにあの子は何も残さずに、この家から去っていった。この世界は残酷だと、私はいやというほど思い知らされた。そんな世界であの子が生きていけるはずがない。世界で一番できないあの子が。
いや、違う。
世界で一番できない子は私だ。あの子には、きっと勇気があった。私には、それすらもない。きっと、あの子なら立派に生きていける。私だけがそう知っている。遠くで蝉の声が聞こえる。どうせ、すぐ死ぬにと私は冷めたように、その声を聞き続けている。
窓の中から見える景色は、とても色褪せて見えた。
7/1/2023, 11:49:28 PM