ずい

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『後悔』

バイバイと言って別れたあの日。
どうして私は大事なあの子が悩んでたことに気づかなかったんだろう。
あの子が住んでいた、燃え尽きたアパートの一室を見上げて膝から崩れ落ちる。
まだ五歳だった。

「悪いけどうちのと遊んでくれない?」

そう告げてあの子を私に預けるようになった女を思い出す。夜と性と煙の臭いがした。あの子を生んだ女。
火の始末をきちんとしていなかった。
あの日、あの子はお水の入ったバケツの隣で倒れていたという。

「あの子の気持ちがあなたにわかる?」
「なに、何なのよ! あの子って誰のこと」

煙臭い女はいまガソリンの臭いを身にまとっていた。
私がかけた。

待っててね。今、まだかなって待ってたお母さんを連れていくからね。

そう心の中で呟いてライターをつけたとき、あの子が嗤う声が聞こえた。

5/15/2024, 2:42:18 PM