どうしようもないわたしが歩いている
種田山頭火の句を抱えながら、私も歩き続けた。
何も持っていないどころか、山のような借金もしていた、税金も滞納していた。
追い詰められて、行き詰まって、逃げ出した。
どうしようもないわたしが歩いていた。
9月26日から、12月17日まで。その内1ヶ月くらいは段ボールを集めて外で寝ていた。ムリ。やっぱり寒い、限界だった。
結局は役所になきついた。もはやほとんど何も考えられぬ、懐中には60円しかなく、恥も外聞もなく、みっともない私がいた。
けれど、役所の人たちはとても親切だった。
日本は良い国です、心からそう、思う。
憲法第25条 生存権
すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
誰でも少しは耳にした事があるだろう?しかし、我が国の自立支援制度は実にしっかりしているのだ。
施設に保護されて、支援の内容を学んで、私は驚いた、実に行き届いている、恩恵を受けながら不満を言っていた人達も沢山いたが、いやいや、冗談じゃない、至れり尽くせりなのである。
その施設には最長6ヶ月いられたが、私は5ヶ月と少しで自立して出る事が出来た。
私は行方不明者であったが、施設によって住所も確定された。従って、逃げていた借金や滞納していた税金もすべて厳しい封筒で催促されてしまったのだが、無料の法律相談も出来るのだ。
食事の心配も寝る場所の心配もないので、じっくり考える余裕も生まれた。疑問点を質問する相手もいる。
そう、放浪している時の私には、時間はあっても、余裕はぜんぜんなかったのであった。
就職活動では交通費が全額支給された。ワイシャツや下着、靴下も支給されて、スーツ一式や靴は貸してくれた。
こんなのはほんの一端に過ぎない、実に細やかに自立するための支援が行き届いていた。
このようなシステムを作り上げた人は何者だろうと舌を巻いた。役人達がよってたかって作ったのだとしたら、日本の役人は素晴らしいと言わざるを得ない。
そうして私は3年かけて借金や滞納していた税金を返し続けて、その額もう残りわずかになった。
他の国ではこうは上手く行かなかっただろう、日本に生まれて幸せだ、日本の役人はやはり優秀だぞと、
誰かに、これを伝えたかった。
2/12/2024, 10:03:24 PM