「またね!」
私には親友がいた。いや、正確には私は今も親友のつもりだ、連絡をとっていないだけで。ここ一年程疎遠なだけで。
彼女との物語を語るには、十年以上遡る必要がある。何せ保育園時代からの仲なのだ。出会いも仲良くなったきっかけも全く思い出せないし、正直物心ついた時からそばにいた。一緒に生まれてきたと言われても信じただろう。それほど彼女は随分昔から隣にいた。二人なら何でも出来ると思わせられるほど私たちは無敵だったし、実際どんな困難(難しい跳び箱や縄跳び、登り棒や戸板)も二人で乗り越えてきた。
しかし、物事には終わりがつきものである。別れは必ずやってくる。そう、卒園である。ちょうどこれくらいの時期だったか、私たちが永遠に一緒にはいられないと気づいたのは。それは幼い身にとって、永遠の別れに等しかった。毎日顔を合わせていた親友に、明日から会えないのだと悟った私の絶望はものすごかった。母親も我が子の絶望に気がついたのか、小学校に上がってから、一年に何度かのペースで会うようになった。もちろん一人で遊びに行けるような距離ではないから母親同伴で。保育園時代と違い、滅多に会えない親友と遊べる機会は非常に貴重であり、私はこの時間が無限に続けば良いのにと願っていた。きっと彼女もそうだったのだろう。しかし時間は止まってはくれない。楽しい時間は無常にも過ぎ去り、日没、帰る時間である。まだ遊び足りない、別れたくない小学校低学年の私たちは何を図っただろうか。そう、逃亡である。追いかけてくる親たちから二人で逃げ、隠れ、帰宅を拒否した。今思うととても申し訳ない気持ちでいっぱいである、特に彼女の母親には。二人は無敵だったのだから許してほしい。とにかく、「またね!」が言えなかったのだ。当時の私たちは。だって次の約束なんてなかったから。一度別れたら次に会うのは早くとも数ヶ月後だったから。
今の私たちは、会おうと思えばいつでも会える。そうしないのは、お互いになんとなく連絡を取りづらいからである。連絡手段はいつの間にか手紙からLINEに変わり、会いにいくのも容易になった。正直こうしてダラダラと電子機器のアプリに文を綴るよりも、言葉を送らなきゃいけない相手がいることに、やっと気づけた。久しぶりに連絡してみようかな。
「そういえばあの子、今月誕生日だったな」
3/31/2025, 5:00:53 PM