あひる

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お題「欲望」



欲望は人類が発展していくたびに膨れ上がっていった。世の中は欲望で溢れてる

「あなたの欲望を満たして差し上げましょう」

男は狭い路地裏の地面に胡座をかいていた。
伸び切った髭に肩まであるであろう髪の毛はボサボサであった。
見るからに怪しく、決して清潔とは言えない。しかし男の周りには毎日たくさんの人が溢れかえっていた。

「俺は大金持ちになりたいんだ!」
「早く良い男性と出会って結婚したい!」
「勉強せずに大学に受かりたい!」

老若男女問わず何十人もの人々が己の欲望を赤裸々に路地裏の男に語っていた
男は静かにそれらを聞いて頷いていた。

それから男は立ち上がり、周りにいた何十人もの人の肩に手を乗せていった

最後の1人の肩に乗せ終わった。

男は言った

「あなたたちの欲望は満たしてあげましたよ。今日は帰ってゆっくり休みなさい」

先ほどまでの熱気は無く、周りの人々は皆んな虚な表情をしている
誰も自分の欲望を口にしない
皆んなの足は静かに路地裏の出口に向かっていった

「私の欲望は人々の欲望を喰らうこと、明日の欲望も楽しみだ」

人々の欲望という概念が生んだ欲望の化身は、路地裏の男として自身の欲望を満たしていたのであった。





3/1/2023, 1:33:09 PM