10年以上前だったと思う。どこの県だったかも忘れてしまったけど、ある神社へお参りに行った。本堂の下が胎内堂というものになっていて、真っ暗な中を…『臍』だったと思う、それを捜して触れば…、願いが叶う…とかなんとかだったと思う。(全てがぼんやり)
それはいいんだけど、わたしは夫を先頭に胎内堂へ入った。闇。真っ暗。何も見えないし、何か喋ると何故か自分の声が耳元で聞こえる…不気味さ。そして狭かった。両壁は、両腕を広げれば届くくらいで、高さは少し身を屈めなければならなかった。とにかく窮屈で息苦しかった。
どれくらい進んだか分からないけど、階段を下へ下へ降りて、滑り台みたいなツルツルな床を歩いて、…ふと、夫が、
「もういい!!戻る」と言ってサッサッと引き返してしまった。
中途半端で帰るのもつまらない、でも、何の光もない闇の中、手がかりも何もない中、わたし1人ではとても前へ進む事ができなかった。結局、臍には触れず。
あれ…、夫は怖かったんだなと思う。わたしも怖かった。
本当の闇、真っ暗な無音の中を突き進むのは、本能を制して進むのは、難しい。
作り物の真っ暗闇でも、
わたしも夫も怖さを克服する事はできなかった。もしかして、本当の自分が分かるのかも。相手がどうとかではなくて。
あれは、産道だったんだよね。
今もあるのかなぁ。一人で入って、後ろから知らない誰かが入って来たら…恐ろしい。なんか、不思議な場所だったな。
4/2/2025, 11:47:56 AM