しじま

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 栗毛のキレイな仔だった。
バカみたいに寒い冬の、嵐の夜に産まれた。
白い湯気の立つ濡れた肢体が、白熱球の淡いオレンジの光に照らされて、ピカピカと輝いていた。

 美しい仔だった。
金色のたてがみを靡かせて仲間と共に草原を駆ける様は、まるで絵画から飛び出てきたかの如く優雅でどこか気品が感じられた。

 気の強い仔だった。
目一杯に地を蹴り、時には噛みついて、相手を追い抜き、誰よりも前を走る。
自分よりも大きい相手にも果敢に挑む姿は、さながら猛獣のようだと思った。

 人が大好きな仔だった。
大歓声の中、青々とした芝の上を金色の光となって駆け抜けた。

 とても賢くて優しくて美しい仔だった。
何度も何度も歓声が上がり、それに答えるように首を上下し、跳ねるように軽やかに駆ける。

あの日の美しい輝きが今も目に焼きついて離れない。

テーマ「ハッピーエンド」

3/29/2023, 4:44:06 PM