せつか

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「寒くなってきたねぇ」
白い息を吐きながら俺の前を歩く。
肩を竦めるその姿は本当に寒そうで、俺は大股で追い付いて腕を掴むとその指に自分の指を絡めた。
「君の手、冷たいからあんまり意味無いんだけど」
「そのうちあったかくなるよ。こーゆーのは気分でしょ」
長い廊下を歩く足音は、いつもより気持ち早めで。
暖房の効いた部屋に早く行きたいと無言で訴えている。
外を見ればマフラーを巻いた子供が道端でぴょこぴょこ跳ねてて。
「霜が降ってたからねぇ。踏んで遊んでんだろ」
「会議終わったら俺らも遊びに行く?」
「馬鹿なこと言ってると手ほどくよ」
振り払われそうになるのを強引に引き戻す。
「うそうそ。あったかいコーヒー淹れてあげるよ」
「それなら許す」
相変わらずお互いの指はひやりとしたままで。
白い息を吐くその横顔の、鼻の頭が赤くなってるのに気付いた俺は思わず言ってしまったのだった。

「今日も可愛いね」


END


「霜降る朝」

11/29/2025, 5:19:52 AM