三行

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「死人みたいな顔をしているね」


先生は言った。

「可哀想に、私が守ってやろうな」

肩に、先生は手を乗せてそのまま抱き寄せた。
僕の髪を撫でる手つきはとてもやさしい。

それに安心するほど心は開いちゃいないが。
触れられるのくらい、撫でられるのくらいどうってことない。
そんなもの今更さ。


「先生は、僕に笑ってて欲しいの」


疑問符なんかつけない。
返ってくる答えはいつも同じだ。つけるだけ無駄さ。


「そうとも、違うとも言えないな。
私はただ、笑っているのが君の本心ならば、そうして欲しい」
「あるがままの君でいることが出来るなら、それ以上のことは無いだろう」


今日は口数が多い。珍しい日もあるもんだ。

「……そう。じゃあ先生、何も言わずにこれを貰って」
「ああ。君から貰えるものはなんでもうれしいよ、ありがとう」

先生の顔を引き寄せて口を開けさせ、錠剤をふたつ、先生の口の中へと放り込む。

何度目だろうか。ため息が出そうなほどこれを繰り返している。
もっとも、ため息などお互いの息遣いに上書きされて、つく暇もないが。

飲み込んだのを確認するように舌を動かし、最後に口付けを落とす。

「ほらせんせ、もう寝よう」

「うん、そうだね。君のことは私が守るから、ほら、ここへ来て、一緒に寝よう」

薬瓶の錠剤はそろそろ尽きそう。
ならもう、眠るべきだ。


明日はとびきり楽しく安らかに過ごそうね、先生。
もっと、一緒にいられたらいいけどね。

一言囁いて、僕は先生に大人しく抱きしめられつつ、明日に思いを馳せた。





「Love you」2024/02/24

2/24/2024, 9:16:21 AM