「死人みたいな顔をしているね」
先生は言った。
「可哀想に、私が守ってやろうな」
肩に、先生は手を乗せてそのまま抱き寄せた。
僕の髪を撫でる手つきはとてもやさしい。
それに安心するほど心は開いちゃいないが。
触れられるのくらい、撫でられるのくらいどうってことない。
そんなもの今更さ。
「先生は、僕に笑ってて欲しいの」
疑問符なんかつけない。
返ってくる答えはいつも同じだ。つけるだけ無駄さ。
「そうとも、違うとも言えないな。
私はただ、笑っているのが君の本心ならば、そうして欲しい」
「あるがままの君でいることが出来るなら、それ以上のことは無いだろう」
今日は口数が多い。珍しい日もあるもんだ。
「……そう。じゃあ先生、何も言わずにこれを貰って」
「ああ。君から貰えるものはなんでもうれしいよ、ありがとう」
先生の顔を引き寄せて口を開けさせ、錠剤をふたつ、先生の口の中へと放り込む。
何度目だろうか。ため息が出そうなほどこれを繰り返している。
もっとも、ため息などお互いの息遣いに上書きされて、つく暇もないが。
飲み込んだのを確認するように舌を動かし、最後に口付けを落とす。
「ほらせんせ、もう寝よう」
「うん、そうだね。君のことは私が守るから、ほら、ここへ来て、一緒に寝よう」
薬瓶の錠剤はそろそろ尽きそう。
ならもう、眠るべきだ。
明日はとびきり楽しく安らかに過ごそうね、先生。
もっと、一緒にいられたらいいけどね。
一言囁いて、僕は先生に大人しく抱きしめられつつ、明日に思いを馳せた。
「Love you」2024/02/24
2/24/2024, 9:16:21 AM