ゆっくりと、目を開ける。なんだか、カーテンから漏れる陽の光が眩しくて。
ふと隣を見ると、白髪の目に光が宿ってない少女が、ベッドから目だけを覗かせて、俺をじっと見ていた。
雪。俺の妹だ。
「んん…雪、おはよ」
「おはよ。ご飯、出来てる」
「そうか。じゃあすぐ行く」
俺はベッドから降りて、雪と一緒に部屋を出る。すると、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。今日は焼き魚だろうか。
リビングに着くと、いつもの顔が揃っていた。
「おはよう勝君。いつも早いのに、珍しいね」
「あぁ、昨日編集してたんで」
「そうなの?それはお疲れ様」
ご飯をよそっているゆなと、そんな会話をしながら席に座る。隣には、眠そうにしている美人、目の前には元気が有り余ってる、まるで小学生のような幼さがある女性が座っていた。
こいつらが、有奈と、朱里。
「あれ、ゆりなさんは?」
雪が、そうゆなに聞く。確かに、あともう1人人数が少ない。
「あぁ、ゆりななら買い物があるからとかなんとか」
「こんな朝に?」
「さぁ、動画でなにか作るんじゃない?」
ゆなは適当にそう言った。詳しく聞くと、ゆりなは、朝早くにコンビニに出かけているそう。でも確かに、ゆりなはよく料理動画を撮るし、今回もその買い出しに行っているのかもしれない。
こんな朝早くに行く必要は無いと思うが……。
「よし、じゃあ食べよっか!」
気づけば、机にはツヤツヤのご飯と、質素な味噌汁と焼き魚が、人数分並べられていた。
地味だが、こういうのが1番好きだったりする。
いただきますと行って、ご飯を1口食べる。
「あ、ちなみに今日の予定は?」
味噌汁を啜っているゆなが、みんなにそう聞いた。
「私は特に」
「えっとねー、夜に配信やる予定!」
「私は……ない」
「俺はゲーム実況でも撮ろうと思ってる」
いいねー、とゆなは相槌を打つ。とは言っても、スケジュールアプリでみんなの予定は共有してるから、多分ゆなも把握してるんだろうけど。
「じゃあ私はのんびりしよ」
「何もしないんですか?」
「たまにはいいじゃない。こういうさ、何気ない日常を過ごすのも」
ふわっ、とゆなは笑いながら言う。
数年前までの俺たちでは考えられなかった、のほほんとした暮らし。もちろん、忙しい時もあるが、それでも充実した日々を送れている。
こうやって、家族のように集まって食事をするのも、俺の夢だったから。
「さ!早く食べよ!」
ゆながそう言うと、俺たちは目を合わせて笑いあって、食事に集中した。
目に見えない、普通のようで普通ではない、何気ない日常を、ただ噛み締めていた。
9/24/2023, 12:01:44 PM