「最近、ハナシが2部構成っつーか、3部構成っつーか、ともかく1個の投稿スペースに収まらなくなってきてるんよ……」
このアカウントの文量、最終的にどこへ行こうとしてるんだろな。 某所在住物書きは過去投稿分を確認しながら、ため息、ため息。
「書く習慣」をインストールした当初は、400字詰め原稿用紙1枚でおさまる文量であったのだ。
それが投稿を続けるにつれて、段々2枚になり、3枚になり、今日はほぼほぼ5枚分。
どこへ行こうというのだろう。
「物語だけじゃなく、『ここ』も合わせれば、文字数だけで2300字だぞ……」
物書きは想像する。 来年の文量やいかに。
――――――
最近最近の都内某所、某深いふかい杉林の中に、
異世界に本拠地を置く秘密の組織の領事館があり、
館長のビジネスネームを「スギ」、
部下のネームを「アスナロ」と「ヒバ」、
そして、領事館の新人を「アテビ」といった。
異世界から赴任してきた彼等の仕事は、
滅んだ世界から密航させてきた異世界の難民を、この辺境の地で行きてゆけるよう支援すること、
そして、1人でも多くの現地住民――この地で言うところの東京都民、あるいは地球人に、
領事館の協力者となってもらって、
そして、領事館の支援活動を妨害する「敵対組織」の邪魔をするための、
駒に、なってもらうこと。
どの世界の、どこへ行こうと、何をしようと、
敵対組織、「世界線管理局」は領事館の活動の一部を取り締まってくる。
それはそうだ。滅亡世界の難民を発展途上の世界に密航させ、支援する領事館の活動は、
いわば違法に限りなく近いグレーであった。
「はじめまして。藤森と申します」
その日は、領事館の仕事の「後者」を十分に理解していない新人「アテビ」が、「藤森」という現地住民を、領事館にご案内。
藤森は都内の貴重で希少な花々が、年々数を減らしてきていることに心を痛めて、
領事館が保有する「異世界の技術」に、希少在来種の保全という希望を見出したという。
「はじめまして」
へぇ、そうかい、そうかい。
自己紹介を為す藤森に、自己紹介で返す領事館の館長は、内心暗い笑いをしており、
藤森を連れてきたアテビ自身も、上司たる館長の暗さに気付いていない――双方、おめでたいことだ。
「アテビからハナシは聞いてある。
この世界の『絶滅しそうな花』を、俺達が持っている異世界の技術で、救いたいんだってな」
まぁ、まずは茶でも。
領事館の館長「スギ」は、そう言って、お茶と茶菓子など用意させつつ、さっそく「地球には存在しない、先進世界の技術」を、藤森に披露。
「現実の3次元にあるものを、本の2次元で保管して、『影絵』に投影してコピーするのです」
藤森の頭の上のはてなマークを置き去りに、館長のスギが異世界の複製機を説明すると、
「ゆえに、『影絵変換器』。影絵にしてコピーして、そのコピーを3次元に再変換すれば、クッキーは2個に、蝶は2匹に、絶滅危惧種の花は2輪に」
なかなか頭が良いのか、勘が鋭いのか、
あるいは、「領事館の『敵』」から事前に何かを吹き込まれていたか。
藤森は、スギのハナシをじっと聞いて、数秒の長考を経て、スッと顔を上げて、
「なるほど」
まるで、スギの隠し事を見抜こうとするような視線でもって、藤森はスギに問いかけた。
「素晴らしい技術だと思います。さすがだ。
ところで、こんなに素晴らしい技術にも、たとえばデメリットとか、注意点とか、禁忌とか。
そういう側面は、存在するのですか」
スギは藤森の視線に既視感があった。
似た視線でもって、スギの同僚を尋問して情報を根こそぎ奪った「敵」が居たのだ。
たしかビジネスネームを「カラス」だか、「ハシボソガラス」だか。
そいつの入れ知恵かもしれない。
(おのれ。忌々しい世界線管理局)
アテビめ。面倒な現地住民を引き込んできたな。
スギは内心で舌打ったが、
まぁ、まぁ。すべては些細なこと。
逆に領事館の敵対組織と通じている藤森を領事館の手中に収めることができれば、
敵のあんな情報も、こんな情報も。
「この技術にデメリットは、」
デメリットは、特にありません。
スギが藤森の質問を受け流そうとしたところで、
「複製するものの材質によっては、電力とか魔力とかの消費がすごいことになります」
藤森を領事館に呼び込んだ新人、アテビが割り込んだ――彼女は正直過ぎた。純粋過ぎるところもある。
これ以上アテビにボロを出されては、藤森が異世界の技術に無条件の盲信を為さなくなる。
(仕方ない。「アレ」を使うか)
スギは隠し持ってきていた耳栓をこっそり付けて、
同じく隠し持ってきていたハンドベルタイプの呼び鈴を小さく小さく鳴らしながら、
アテビを「茶菓子の追加」という名目で退室させ、
チリン、ちりん。 チリン、ちりん。
藤森の耳に届くような、届かないような、かすかな音量で呼び鈴を鳴らし続けた。
それは聞いた者の魂から――
「藤森さん!耳!みみ、ふさいでください!!」
「えっ?」
退室前のアテビが、呼び鈴の音に気付いた。
「『闇堕ちの呼び鈴』っていうアイテムの音がします。聞いた者の魂を、闇堕ちで無理矢理こじ開けてしまうんです!耳ふさいで!」
「やみおち???」
ああ、藤森がスギの手元に気付き、席を立とうとしている……どこへ行こうというのか。
「藤森!」
こっそり藤森を闇堕ちさせて、操り人形同然にして、管理局に潜り込ませようと思っていたが、
バレてしまっては仕方がない。
リリン!チリン!
隠さず騙さず、スギが手元の呼び鈴を、強くつよく鳴らして藤森の魂を揺さぶっていると……
『――なるほどな、そういうことか』
ここで前回投稿の物語が合流。
「前回投稿」とは? それに関しては、文字数……
4/24/2025, 3:20:05 AM