エリィ

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(今回はアンニュイなのでお題はパスします)

 私はひざを抱えて、海のよく見える岸壁に座っています。
 あたりには、冬の景色を楽しむ観光客の姿がちらほら見受けられました。
 下からは、崖にぶつかり轟く波の音が聞こえ、雲ひとつない良い天気の今日は、遠くの水平線がはっきりとよく見えます。下から吹き上げる風は冷たく、肌を刺しました。

 水平線のその向こうには何があるのでしょうか。しかし一生見る機会はないでしょう。なぜならこの景色も、もう二度と見ることはないからです。

 私は今まで生きてきたことについて、ぼんやりと考えてきました。
 頼もしいなお父さんと、優しいお母さん。
 いつも話を聞いてくれるお兄ちゃん。
 懐いてくれる可愛い妹。
 そして、たくさんのにぎやかな親戚に、あちこちにいる素敵な友達。
 
 たくさんのひとが、私の存在が他の人を救うのだと励ましてくれました。
「あなたがいてくれて、ここにいてくれてよかった」とも、言ってくれたこともありました。
 何度も「ありがとう」と言われたこともありました。
 実際に、たくさんのひとの助けにもなってきたと、他の人からも認められています。
 しかし、私は、一番大切なひとの心を救えませんでした。

 立てたひざに顔を埋め、目を閉じました。
 波の音に耳を澄ませます。ぶつかる波の音が、足元に響いてくるのを感じます。

 ただ、疲れました。
 もう、休んでもいいですよね。

 動くことが出来るようになった私は、ようやく立ち上がり、崖の縁へと足を運びます。見下ろすと、遥か下に波がぶつかる様子が見えました。
 そこから一歩踏み出しす直前、誰かに声をかけられました。

*****

 私は今毛布にくるまって冷えた体を温めながら、交番でココアを飲んでいます。
 寒々しい交番の中は、ストーブが焚かれていて、その上に乗っている大きなやかんが湯気を吹き出していました。

 涙を流しながら話す私の胸の内を、ここにいるボランティアの方がただ黙って聞いてくれました。

「ありがとうございました」

 私は軽く頭を下げると、交番を去りました。
 次に行うことは、カウンセラーの私自身が一番良く知っていました。ですから、この場所から移動して最初にいったその場所とは……カウンセリングルームです。
 だめならその時はまた考えれば良いことです。

(打ち切り:エリィ先生の次回作に期待)

*****

また明日お会いしましょう。

6/12/2023, 2:16:32 PM