(今回はアンニュイなのでお題はパスします)
私はひざを抱えて、海のよく見える岸壁に座っています。
あたりには、冬の景色を楽しむ観光客の姿がちらほら見受けられました。
下からは、崖にぶつかり轟く波の音が聞こえ、雲ひとつない良い天気の今日は、遠くの水平線がはっきりとよく見えます。下から吹き上げる風は冷たく、肌を刺しました。
水平線のその向こうには何があるのでしょうか。しかし一生見る機会はないでしょう。なぜならこの景色も、もう二度と見ることはないからです。
私は今まで生きてきたことについて、ぼんやりと考えてきました。
頼もしいなお父さんと、優しいお母さん。
いつも話を聞いてくれるお兄ちゃん。
懐いてくれる可愛い妹。
そして、たくさんのにぎやかな親戚に、あちこちにいる素敵な友達。
たくさんのひとが、私の存在が他の人を救うのだと励ましてくれました。
「あなたがいてくれて、ここにいてくれてよかった」とも、言ってくれたこともありました。
何度も「ありがとう」と言われたこともありました。
実際に、たくさんのひとの助けにもなってきたと、他の人からも認められています。
しかし、私は、一番大切なひとの心を救えませんでした。
立てたひざに顔を埋め、目を閉じました。
波の音に耳を澄ませます。ぶつかる波の音が、足元に響いてくるのを感じます。
ただ、疲れました。
もう、休んでもいいですよね。
動くことが出来るようになった私は、ようやく立ち上がり、崖の縁へと足を運びます。見下ろすと、遥か下に波がぶつかる様子が見えました。
そこから一歩踏み出しす直前、誰かに声をかけられました。
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私は今毛布にくるまって冷えた体を温めながら、交番でココアを飲んでいます。
寒々しい交番の中は、ストーブが焚かれていて、その上に乗っている大きなやかんが湯気を吹き出していました。
涙を流しながら話す私の胸の内を、ここにいるボランティアの方がただ黙って聞いてくれました。
「ありがとうございました」
私は軽く頭を下げると、交番を去りました。
次に行うことは、カウンセラーの私自身が一番良く知っていました。ですから、この場所から移動して最初にいったその場所とは……カウンセリングルームです。
だめならその時はまた考えれば良いことです。
(打ち切り:エリィ先生の次回作に期待)
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また明日お会いしましょう。
6/12/2023, 2:16:32 PM