"一つだけ"
ここ最近のハナの運動量を見るに、やはり朝昼晩のドライフードだけでは足りない。
そこで、運動の後におやつを食べさせる事にした。
この前見つけた、ドラッグストアのペットフードコーナーに置いてあった鶏ささ身を、今朝買ってきた。
一つ一つが親指の爪と同じサイズの錠剤みたいな形をしている。あげるのも保存も簡単そうだ。
早速お気に入りの猫じゃらしで遊んだ後に、袋から一粒取り出して差し出してみる。
最初は不思議がって匂いを入念に嗅いで、食べ物だと認識してようやく口を開けて食べた。
「みゃあん」
美味しそうな顔で咀嚼をすると、『もっと』と言わんばかりの声色で鳴いた。
「美味しいか」
また一粒取り出してハナの前に差し出すと、今度はすぐに食らいついた。本当に気に入ってくれたようだ。
「みゃあ、みゃあん」
「あと一つだけだぞ」
これ以上は夜ご飯食べられなくなるぞ、と言って最後の一粒を出すと、やはり美味しそうに食べて嚥下した。
先程の言葉を理解しているのか、催促はしてこない。
「お前本当賢いな」
よしよし、と頭を撫でる。
「さて、また行ってくるな」
ハナをベッドの上に乗せてストールで包むと「みゃん」と鳴いて身体を丸めた。お昼寝の体制だ。
「……行ってきます」
囁くように小声で言うと、足音を立てないように、そおっと居室を出て診察室に戻った。
4/3/2024, 11:54:10 AM