霜月 朔(創作)

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未来図



それは、
月の光が ただ冷ややかに
肩を撫でてゆく夜だった。

君は何も知らず、
揺れる灯を見つめていた。
酷く、優しい目をして。
あの瞳がどうして滲むのか、
今もまだ、俺にはわからない。

言葉にすれば、
崩れてしまう気がして、
俺は笑っているふりをして、
君の隣に立っていた。

この名もない想いを、
君から隠し通すには、
静寂が、あまりに脆すぎた。
胸の奥で、何かが、
音もなく欠けていくのがわかった。

夢を語る君の横顔を、
何度も、何度も、
目でなぞるしかできなかった。
けれど、君の描いた未来図に、
俺の影は――きっと、ない。

孤独というのは、
君がいないことじゃない。
君がいるのに、
手を伸ばせないことなんだ。

灯が消えて、夜が終わる。
それでも尚、俺はここにいる。

俺は、動けない。
ただ、静かに、
終わりのかたちを待っている。
名もなき『終わり』を。

4/15/2025, 8:25:52 AM